どっかいけ口内炎
- 2023年11月15日
- 院長ブログ
口内炎ってめっちゃ痛くないですか?
多くの方が経験をしたことがあるのではないでしょうか。
口内炎ができる部位によっては、食事もままならないですよね。熱いものをとると痛いし、醤油なんかでもしみて痛いです。ほんとにストレスです。何とか対処できないかと思いネットなんかで「口内炎 痛い」などと検索すると、ビタミンやミネラル不足、誤咬、ストレスなど原因は様々と言われているために、自分の食生活を省みてビタミン不足を思ってか薬局やコンビニに走ってビタミン剤を買ったりした経験ありませんか? 2~3日飲み続けると不思議と痛みが和らいできて、気付かないうちにビタミン剤を飲まなくなりますよね。するとビタミン剤が入った瓶だけが棚に残り、時折整理のために片付けをするタイミングで「これいつのビタミン剤だっけ?」とひょこっと出てきたりしますよね。ちょっとしたドラッグストア並みにビタミン剤が陳列することもあるんじゃないでしょうか。
“ビタミン不足であれば、ビタミンを摂取すれば治ります“
ビタミンB群やビタミンC不足が原因であれば、確かにビタミン剤の摂取が口内炎の修復に働くと思います。また、ビタミンC自体はコラーゲン合成に不可欠な要素なので、組織修復の促進効果があるかもしれません。ただし、実際は口内炎がビタミン不足かどうかについて調べないですよね。
ここで口内炎といっているのは、アフタ性口内炎のことですが、口内炎といっても様々あり、難治性であったり、再発を繰り返したり、その他随伴症状があったり様々です。そういった場合には他の検査を行うこともあります。
数年前の出来事になりますが、某有名芸能人の方が口腔がんを公表したニュースを覚えていますでしょうか。当時、その報道直後から口内炎で大学病院や基幹病院へ受診する方が殺到したそうです。私も当時地方大学病院の口腔外科に所属しておりましたので、外来診察時には多くの方が受診された記憶があります。テレビでいつもよくみていたある意味身近な方が口腔がんになるなんて夢にも思わないですよね。
仮にアフタ性口内炎であれば、2週間で大抵は治りますので、痛みが強い場合はステロイド軟膏や含嗽剤を処方して様子を見て頂きます。よく見るアフタ性口内炎とは、白い偽膜の周りに赤く腫れたような状態で、接触痛を伴います。なかには酷い状態だと出血することもあります。多くは5mm前後のものが多いですが、なかには10mmを超える大きなものもあり、あまり大きいと悪性腫瘍を疑い、生検したり、CT、MRI検査をおこなったりすることがあります。稀に内服している薬の副作用でも口内炎ができることもあります。
“メトトレキサート(MTX)ってご存知ですか?“
商品名ではリウマトレックス®、メソトレキセート®と呼ばれています。リウマトレックス®は関節リウマチのアンカードラッグであり、世界的に広く普及しています。メソトレキセート®は抗がん剤治療に用いられており、白血病の方は長期的に内服をすることがあります。
過去にリウマトレックス®内服により口腔内に潰瘍ができた症例を経験したので、一部紹介をしたいと思います。関節リウマチに対してリウマトレックス®を内服していた方が、上顎歯肉に約20mm大の潰瘍を契機に受診された方がいました。
臨床診断として、MTX関連リンパ増殖性疾患と口腔癌が鑑別として挙げられ、膠原病内科へ紹介をしました。MTXの中止となり、確定診断を得るために入院下に生検を行いました。この時、病棟担当で生検したのが私でした。切除した組織片を病理にて確認すると異型リンパ球がびまん性に増殖する所見を認め、リンパ増殖性疾患(LPD:lymphoproliferative disorder)との診断となりました。その後、約1か月半後には上皮化および症状の軽快を認めました。
このような難治性の口腔潰瘍はその他にもたくさんあります。広義の意味では、こういった口腔潰瘍も口内炎と呼ばれます。私が2018年の口腔科学会で口演した症例は、「舌潰瘍を契機に診断されたベーチェット病」でした。悪性腫瘍を疑ったところ、結果はベーチェット病だったということです。
このように口内炎であっても、いろいろな全身疾患が潜んでいる可能性があります。一般的に口内炎は2週間で症状が軽快するため、2週間を超えて症状が持続するようなら医療機関の受診をおすすめします。
近年は40歳未満の若年性の口腔がんが増加傾向にあるとの報告があり、私自身も30代で口腔がんと診断された方を2名経験しました。口腔がんにおきましては、大半が固形がんであるため、早期発見早期治療が肝要となります。