子どもの転倒による歯ブラシ事故について
- 2024年6月15日
- 院長ブログ
こんにちは、6月に入りました。
私自身最近知ったのですが、近年、運動会が春に開催される学校が増えてきているそうです。私の世代は、運動会といえば秋の風物詩みたいなイメージがありましたので、時代の変化をしみじみと感じております。
今回は、外傷分野にて思うところを少々述べたいと思います。
幼児期、学童期のお子さんが転倒してケガをすることはしばしば目にします。 外に出ると様々な障害物が、子どもの身に危険を及ぼす可能性があることは周知の事実であり、学童期前の未就学児では自宅内、屋内であっても油断はできません。親御さん達が細心の注意を払っても、時にはケガをしてしまいます。先日、偶然に歯ブラシ事故についての文献を目にしましたので、今回は私が経験した症例を少し述べたいと思います。
われわれの歯科口腔外科領域である口腔顎顔面の外傷は、日常診療をおくる中で度々遭遇します。特に子どもの転倒による口唇や舌、歯肉の裂創は一定の頻度で経験します。衝突物の種類や衝突した時のエネルギーが大きくなると、歯の破折、脱臼、歯槽骨骨折や顎骨骨折などの高エネルギー外傷へと重症化するケースもあります。私も大学病院で当直をしていた時は、よく夜間に対応をしました。
もちろん軽症なケースがほとんどなのですが、口唇や舌、歯肉は粘膜であるため、比較的皮膚よりも切れやすく、少々の裂創であっても、突然の出血となかなか止血が得られないために大抵は驚きます。われわれ医療人でも手術の際に一番ヒヤリとするのは出血であり、血をみると焦り不安に駆られるのは、至極当然の反応だと思います。受傷直後はなかなか止血がせずに焦燥しますが、圧迫し続ければ出血の勢いは大抵緩徐になり、医療機関受診の際には、止血していることが多いように経験上思います。種々検査にて骨や歯に異常がなければ、経過観察となることが多いですが、創傷二期治癒による瘢痕形成が生じ、特に口唇(赤唇部)や皮膚などの整容に影響がでる場合は、縫合処置を要することがあります。
外来処置のみで対応可能なケースが多いですが、稀に室内の転倒によっても手術を要する場合があり、私が経験をしたのは、歯ブラシをくわえたままソファから転落したケースでした。
当時3歳の男の子が、就寝前に歯ブラシをくわえたままソファから転落し受傷。歯ブラシが頬粘膜に刺さり、内側に存在する頬脂肪体が逸脱したため、全身麻酔下での手術となりました。幸い無事に後遺症やその他合併症がなく完治しましたが、咽頭方向へ歯ブラシが及んでいたらと想像すると非常に恐ろしいことでした。
こうした事故を未然に防ぐためには事故防止行動が絶対的に必要であり、
①柄が短い幼児用の歯ブラシを持たせる
②歯ブラシの際は座らせる
③子どもの傍から離れない など
といった行動が肝要となります。
消費者庁・国民生活センターのホームページに類似症例の事故報告が寄せられていますので、気になる方は確認してみてください。