妊婦の歯科治療について|船場池田歯科|堺筋本町の歯医者・歯科

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コラム

妊婦の歯科治療について|船場池田歯科|堺筋本町の歯医者・歯科

妊婦の歯科治療について

オリンピック・パラリンピックや全国高校野球など8月はイベントが多く、アツく盛り上がっていますね。

先月77日に実施された東京都知事選挙も、日本国首都の首長選挙となれば連日ニュースで報道を受け、全国的に注目されていました。選挙結果は大方の予想通り現職候補の当選となりましたが、東京都、さらには日本の将来の舵を取ろうと他の候補者達が掲げるメッセージにはすごく感銘を受けました。なかでも、今回の選挙戦を行う上での一つのテーマとなっておりました東京都民の合計特殊出生率や日本の人口減少についての演説内容が個人的には印象に残り、ふと思い耽る瞬間がありました。

 

今般、人口減少や少子化が度々社会問題として取り上げられ、年間出生者数が80万人を下回る現状で将来的に各医療機関にも影響が出てくる可能性は否定できません。一部の地方では、子どもの数が激減しているために小児科医療施設が無い地域も存在しており、子どもの数が減少するにつれ、小児医療の需要が減少し、小児科、小児歯科学がマイノリティ分野になる可能性を私たちは危惧しなければなりません。都会においても地域によっては子どもの数が少ない地区はありますが、ゼロにはならないため、日々、小児歯科分野や妊産婦の周産期に対する歯科知識の研鑽を積まなければならないと考えています。

 

そこで、先日読んだ”dentistry journal”内で20214月に投稿された「Pregnancy and Dentistry : A Literature Review on Risk Management during Dental Surgical Procedures」について、コラムの内容を簡単に書きたいと思います。

 

・妊娠性歯肉炎

  • 妊娠3~8ヵ月の間に現れ, 出産後に徐々に軽減する.
  • 主な原因は歯垢ではなく, 妊娠に伴う身体的変化により炎症反応が活性化され, 炎症性マーカーの発現の増加によるもの.

 

・歯周病治療の役割

  • 結論として, 妊娠中の歯周病治療が早産に影響を与えるかどうかは明らかではない. 低出生体重(2500 g未満)のリスクを軽減できるという科学的根拠は低いが, どの歯周治療が有害事象の予防に優れているかを判断するにはデータが不十分である.

 

・早産

  • ヒトを対象としたいくつかの観察研究では, 歯周病と早産, 早期破水, 妊娠中毒症, 流産, 産後子宮内膜炎などの妊娠の悪影響との間に正の関連があることが報告されている.
  • しかし, すべての観察研究が早産や低出生体重と歯周病との関連を報告しているわけではない.

 

・妊婦に関する歯科医の知識

  • 米国食品医薬品局(FDA)は, 歯科保健の専門家グループによって策定されたレントゲン写真に関する推奨事項を発表しており, その推奨事項は妊娠中でも有効である.
  • 妊娠初期は器官形成期であり, 胎児は放射線の影響を受けやすくなります. 妊娠中期や後期には安全とされる線量でも, 妊娠初期には有害となる可能性があります.

 

・妊婦の歯科治療

  • 歯科の緊急事態, 急性の痛み, 感染症の場合は歯科医の介入が必要となり, 治療を延期すべきではない.
  • 妊婦が保存的治療を受けない場合, 母親から子供への唾液を介しての感染により, 赤ちゃんが虫歯菌に感染する可能性が増加する.
  • 妊娠中の歯周治療の主な役割は, 妊婦の歯周病と全身の健康を改善することである.

 

【結論】

  • 妊娠は口腔にも影響を与える多くの変化を特徴とする特別な出来事ですが, 治療が必要な妊娠中の患者を治療することは可能であり, 安全である.
  • 発表された文献では, 妊娠と歯肉炎および歯周炎の悪化との間に相関関係があると述べられていますが, 歯科治療が妊娠の悪影響を防ぐこととの関連性と効果を調査するには, さらなる研究が必要である.

 

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この論文を読む限りでは、あまり歯周病と早産・低体重出生児との相関性は、過度に言わない方がいいのかもしれません。

ただ、妊娠すると身体的変化から歯肉炎が起きやすいのは間違いないので、妊娠中期には一度妊婦歯科検診を受けることを推奨します。

妊娠中においても基本的に安心して治療することが可能ですが、妊娠10週未満は胎児の器官形成期なので、必要以上にX線の撮影や薬剤の投与は避けるべきです。

ただし、急性症状が出現し、X線の撮影や薬剤を投与する利益が上回る場合は、それらを受けるべきであり、薬剤に関しては比較的安全な代替薬が存在しますので、過剰に心配する必要はありません。X線撮影においても、放射線による確率的影響は否定できませんが、デンタルX線の線量は極少量なので、こちらも過剰に心配する必要はないと考えます。

 

今般、出産数が減少しているからこそ、今後も周産期や小児歯科学についての研鑽を重ねていかなければなりませんね。