予防治療
予防治療
「予防歯科をご存知でしょうか。残念なことに日本は先進諸国の中でも歯に対する意識が低く、予防歯科の概念があまり浸透していません…」といった決まり文句が、ここ数年前まで予防歯科を語る上でよく耳にしましたが、近年国内の予防歯科に対するニーズは着実に高まっています。
厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査」にて、「過去1年間に歯科検診を受けた者の割合」は52.9%であり、平成21年、24年、28年の推移では増加しています。また、令和5年6月29日にプレスリリースされた「令和4年歯科疾患実態調査」では、歯科検診の受診率は58.0%まで増加しており、国民の歯科健康志向は着実に増加傾向にあります。
平成21年 | 平成24年 | 平成28年 |
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34.1% | 47.8% | 52.9% |
国の政策の基本的な方向性である「骨太の方針2022」において、今回初めて生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討が明記されました。国民皆歯科健診の普及が高まるにつれ、今後ますます予防歯科概念や定期管理型歯科医院の需要が高まることが予測されます。
原則として歯科疾患にとどまらず、医療全体のなかで健康であることが一番の利益ではないでしょうか。現に歯科領域の中でもう蝕罹患率の低下や定期検診の受診率の増加傾向からこのような概念を多くの人々が抱いていることは明白です。治療にかかる時間、費用や労力を極力抑える考えとしては、予防意識の高さが重要になってきます。
具体的な行動例としては、
重度のう蝕、歯周病に罹患して歯を失ったりすると生活の質(QOL)が低下してしまい、また将来的なADL(日常生活動作)の低下にもつながる可能性があります。高い予防意識を持つことで、歯の喪失を防ぎ、人生100年時代へ“健口”を維持しましょう。
予防歯科の中心は歯科医院の定期的な受診とご自宅でのセルフケアです。
歯科受診の際は、
歯ブラシや歯磨剤選びでお困りではないでしょうか。正しい知見を持った歯磨き指導を受けるだけでも劇的に口腔内が改善される方もいます。歯や歯肉の状態にあったものを提案させていただきますので、気軽にご相談ください。
妊娠期間中は新しい命を授かる大きな期待とその反面心身ともに不安も大きな時期だと思います。悪阻(つわり)による歯磨きの困難や唾液分泌量の低下などにより口腔内の環境も不安定となりやすく、歯や歯肉にトラブルが発生しやすい時期となります。
我々歯科医療の観点からは、妊娠中に気をつけたいことの一つとしてプラークコントロールがあります。妊娠をすると女性ホルモンが増加し、歯肉炎(妊娠性歯肉炎)や歯周病に罹患しやすくなり、近年、妊娠中の歯周病は、早産および低体重児出産へのリスクが高まることが解明されています。これらは妊娠中に増加する、女性ホルモンのエストロゲンが大きく関わっているといわれています。エストロゲンが歯肉の一部の特定細胞を標的にすること、また歯周病原細菌の増殖を促進させることなどが知られています。つまり、口腔内が歯肉の炎症を起こしやすい環境となり、歯周病が非常に進行しやすい状況が整ってしまうのです。 妊娠中期から後期にかけて女性ホルモンが増加するため、さらにリスクは高まります。出産後はホルモンの減少とともに歯周病リスクは元には戻りますが、プラークコントロールを怠ると妊娠性歯肉炎から歯周病へ移行することもありますので、注意が必要です。
歯周病は予防可能な疾患ですので、母子健康のために口腔内の環境を整え、正しい知見を持ったプラークコントロールを実施し、周産期のリスクを少しでも軽減させることを主目的としております。
妊婦歯科健診をきっかけに治療へ移行される場
頻度としてはう蝕治療が多いですが、まれに親知らず抜歯などの侵襲が高い治療を必要とするケースもあります。これら治療により母体や胎児に影響を及ぼさないか、不安な点が多々あるかと思います。
特にレントゲン検査ではX線による胎児への被曝、薬剤の使用では麻酔薬や内服薬(鎮痛薬、抗菌薬等)による胎児への影響などに不安を持たれる方も少なくないと思います。これらの不安点につきましては極力配慮を行い、必要であればかかりつけ医への照会を行った上で治療に取り組みますのでご安心ください。
治療時期に関しましては一般的に妊娠中期(妊娠安定期)に行いますが、健康状態(お腹の張りや貧血、妊娠高血圧症候群など)を配慮し相談の上で実施させていただきます。
まれにですが、治療中に血圧低下により気分不快、意識が薄れるなど(仰臥位低血圧症候群)の症状が出現する可能性がありますので、チェアーポジションや頻繁なお声かけによって配慮させていただきます。
何よりも母子の安全を最優先に考えますので、お気づきの点がございましたら遠慮なくご相談ください